「世界三大医学」と聞くと、西洋医学が思い浮かぶしれませんが、それは違います。この言葉は、西洋医学が確立される前に、世界各地で独自の発展を遂げた伝統医学を列挙したものです。中でも、大きな影響力を持っていたのが、「中国医学」「アーユルヴェーダ」「ユナニ医学」の3つです。これらの医学は、西洋医学とは異なる視点で人間の体と健康を捉え、それぞれが長い歴史の中で培われてきました。病気の治療だけでなく、病気にならないための予防や、健康を維持するための生活習慣などにも重きを置いています。

中国医学は、中国の長い歴史の中で発展してきた医学体系です。鍼灸や漢方薬など、日本でもおなじみの治療法が含まれています。体のエネルギーの流れである「気」のバランスを整えることで健康を保つという考え方が基本にあります。一方、アーユルヴェーダはインドを起源とする医学で、およそ5000年以上の歴史を持つといわれています。アーユルヴェーダの治療では、一人ひとりの体質を見極め、食事療法やマッサージ、瞑想、ハーブなどで、心身の調和を図ります。そして、ユナニ医学は、古代ギリシャの医学が起源となっており、南アジアや中東を中心に、パキスタンやインドなどで広く行われています。この医学は、体の中にある四つの体液(血液、粘液、黄胆汁、黒胆汁)のバランスが健康に大きく関わるという考え方に基づいています。

上記の伝統医学は、それぞれ異なる起源を持ちながらも、人間全体を一つのまとまりとして捉え、心と体のつながりを重視するという共通点があります。病気の症状だけを見るのではなく、その人の体質や生活環境、心の状態なども含めて総合的に診断し、治療や養生を行うのが特徴です。現代の西洋医学が高度に専門分化しているのとは対照的に、広い視野で人間の健康を考える視点を提供してくれます。伝統医学を知ることは、私たちの体を深く理解することにもつながるのではないでしょうか。