漢方は漢方薬だけでなく、漢方医学全般を指します。漢方医学は、江戸時代にオランダから導入された蘭方医学と区別するために生まれた言葉です。多数説としては、5世紀に渡来した東洋医学と内容はほとんど変わりません。漢方の漢は中国のことで、蘭はオランダという意味を持ちます。手術や投薬を中心とした治療方法を採る西洋医学と対比される存在として、東洋医学は現代でも注目されているのです。もっとも、漢方は東洋医学の一部にすぎないという説もあります。

東洋医学には中国系の伝統医学のほか、アラブのユナニ医学やインドのアーユルベーダ医学も含まれるというものです。さらに、中国系伝統医学は漢方に加えて、中医学と韓医学もあるとされています。そして、漢方には動植物を煎じた薬を内服する治療と、針灸やあんまなどの皮膚を刺激する治療の両方を含む場合と、漢方薬の処方だけを指す場合の2種類があるのです。いずれにせよ、患部に特定した治療を意識せず、心身全体のバランスを改善することを目的としています。

西洋医学を中心とする現代医療では、西洋医学の偏重を見直す動きが強まってきました。そのため、漢方薬が保険適用されるなど、漢方医学を積極的に採り入れる医療機関も増えてきています。西洋医学では治療が難しい病気について、針灸やあんまといった血流を円滑にする療法も活用されるようになっているのです。死体の解剖から始まった西洋医学に対して、生きた人間の心身を一体として捉える漢方医学の観点が見直されています。